スピーカーメーカーはスピーカーユニットと最適なエンクロージャーを設計し、多くの試作を行い、繊細な調整のもと一つのスピーカーを仕上げます。
そのスピーカーに対し、他に好みのスピーカーがあるからといってそちらのスピーカーユニットを外して持ってきて、単に入れ替えたところでいい音にはなりません。
バイノーラル技術において、HRTFを個人のものに入れ替えるというのはそういうことです。
皆さんご存じの「HRTFを自分のものに入れ替えると定位が改善される」は学術として定説です。
同様に「HRTFを入れ替えると音が変わってしまう」
これも音楽でバイノーラルを扱ったことのある者にとって定説です。
しかしこの事は伏せられています。
「学術として定説だからHRTFは個人適応させるべきだ」と、そうしたバイノーラルプロセッシング技術やソフトウェアが生まれても、すべて上手くいかないのは当たり前なのです。
スピーカーユニットは入れ替えないのに、何故HRTFは入れ替えていいと思っているのでしょうか?
要するに
定説の誤った解釈が起きている。
昔からバイノーラルは事あるごとに注目されてきました。
"髪をチョキチョキ"、"マッチ箱を頭の周りでカサカサ"、"耳元でのささやき" など、皆さんも一度は聴いて驚いたことがあると思います。
なぜそのように聴こえるのか、またさらに正確な定位を作るにはどのようにしたら良いのか、そうした研究の元、人の頭の大きさや顔や耳の形、あらゆるものが異なるため、そのHRTFは自分のものが絶対に良い、という結果が出たのです。
しかし
それは主に音像定位の話です。
音楽は定位だけを聴くものではありません。
それなのにバイノーラルにおける音像定位の定説を、音楽を聴くためのバイノーラル技術にもそのまま適用してしまっています。
何も疑わずに。定位さえ改善されればすべてOKとし。
音が変わってしまうことも黙認し。
HPLが音楽に特化したバイノーラルプロセッシングと言っているのは、定位だけでなく、音楽をバイノーラル化してヘッドフォンやイヤフォンで聴くために必要な様々な要素に対し目を向けて設計しているという意味です。
スピーカーメーカーが、ユーザーに対しユニット交換を推奨するでしょうか?
最初に話した通り、スピーカーユニットと最適なエンクロージャーを設計し、多くの試作を行い、繊細な調整のもと「この音を聴いて欲しい」と仕上げられたスピーカーに対し、「ユニット替えた方がいいですよ」という設計者はいないと思います。
ですので間違った定説を音楽のバイノーラルに対し用いるのは止めてください。
音楽のバイノーラルの定説は"HRTFを替えてはいけない"です。
HRTFを替えても良いとされるバイノーラルプロセッシング技術は、よく考えずに設計されたスピーカーと同じですので性能は悪いと思って間違いないです。
でも、そうしたソフトウェアを持っているからと言ってがっかりすることはありません。
エフェクターとしての使い道がありますから。
0 件のコメント:
コメントを投稿