Ambisonicsのスピーカーデコーダー設定で、実際のモニタースピーカーの配置と同じ配置を設定していませんか?
ソフトウェアで正しくスピーカーの位置を指定すれば正しく計算され、最適な音が出力されると思っている人が多いと思います。
本当にそうか、確かめましょう。
まず、こちらは標準的な7.1.4chスピーカー配置のスピーカーデコーディング設定です。
プラグインはIEM Plugin SuiteのAllRADecoder。
フロントL/R 30度
サイドL/R 110度
リアL/R 150度
5.1chと7.1chの兼用を考え、サイドを110度にしているスタジオは多いと思います。
リアは135度かも知れませんが、分かりやすくするためにフロントとのバランスを取りました。
赤い分布が計算上のエネルギー分布です。
青い丸がスピーカーの位置(緑はフロントセンタースピーカー)。
赤いエリアとスピーカーの位置が合っているほど、計算上無理のない処理がなされていると思ってください。
また、赤いエリアでは音像がシャープに、薄いエリアは音像がぼやけます。
ですので、濃淡が強いと音像の定位は明確になるが、空間的な繋がりが悪くなる。
逆に濃淡が少ないと、定位感は弱いが空間的な繋がりは自然、といった見方になりますが。
音場表現の話なのでどちらが悪いというわけではなく、いずれの場合も全体としてバランスが取れているかどうかが重要になります。
レベルメーターは、スピーカーデコード後の出力レベルです。
入力ソースは、均一に音の広がったAmbisonicsの音源を使っています。
つまり均等なスピーカー配置であればすべての出力レベルが同じになるような音源です。
左から、
フロントL
フロントR
フロントC
サイドL
サイドR
リアL
リアR
トップフロントL
トップフロントR
トップリアL
トップリアR
です。
フロントL/Rが、リアL/Rより2dB小さいです。
そしてすべてのスピーカーの中で一番小さい出力レベルです。
これはもちろんフロントCがあり、フロントが3本だからです。
ソフトウェア内の計算上はこれで、スピーカー配置の中心x,y,z=0,0,0の座標において正しい結果です。
頭の周りに360度均一な音が鳴っている状態でしょうか...
しかし、実空間でx,y,z=0,0,0に居続け音楽を聴くことはできません。
(ヘッドフォンはOK、それがヘッドフォンのストロングポイントの一つ)
実際はどの様に聴こえるでしょうか?
サイドL/Rが大きいので、少し左右にズレるとそのどちらかの音が急に大きく聴こえると思います。
フロント3台を考えてみても、2dBとは言えセンターの音が一番大きく聴こえるので、後方よりも前方のワイド感が狭く感じると思います。
これがx,y,z=0,0,0においては、サイドL/Rが良い方へ作用してくれるのですが、実空間ではそんな上手くはいきません。
よってソフトウェア処理の段階で均一を目指すことが重要になります。
フロントセンターをやめます!
エネルギー分布が僅かにスピーカーの位置と重なる方向となり、濃淡のバランスが整い始めました。
出力レベルもフロントの存在が増しました。
しかしリアとのバランスは逆転しています。
ただ、こちらの方がフロント、サイド、リアのバランスは何となく良い気がしませんか?
ではさらに、
サイドの位置を110度から90度(真横)に変更します。
どうですか?
エネルギー分布も出力レベルも整ってきました。
フロントとリアのレベルが同じになり、トップスピーカーのレベルも4台揃っています。
この方が確実に無理のない正しい音場になっているはずです。
ソフトウェアから出力される段階で崩れているバランスを、スピーカーの位置と調整で修正して正しバランスに整えるのは無理です。
Ambisonicsの様に、すべてのchのバランスによって成り立つ音場を生成するフォーマットは、均等な設定によって無理なくバランスの整った出力を計算させるのが、音も音場も最も良い聴感を得る結果に繋がります。
物理的なスピーカーの角度が多少違っていても、です。
最後におまけ
いかがですか?
サイドも無くしてしまいました。
ミッドとトップによる8chキューブです。
均一なエネルギー分布と出力。
これがイマーシブな立体音場を生む理由です。
モニター環境や納品フォーマットが7.1.4でも9.1.6でも、すべてのMixをそれらのchトラックで行わなければいけないわけではありません。
2chのMixを合わせる
Ambisonicsは8chキューブにする
音像移動もセンターは要らないと思うので、6.4chや8chキューブなどにする
など
リヴァーブもフロントセンターは必要無いと思います。
最終的にフォーマットに落とし込めればよく
柔軟で且つ正しい知識が良い作品制作には欠かせないと思います。
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