2018/05/13

ラジオの3Dサラウンド放送

先日、
藤本健のDigital Audio Laboratory
「プロ野球のラジオ生中継でリアルな3Dサラウンド! 制作現場を見てきた」
がAV Watchに掲載されました。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/1120234.html


音の仕事をしている自分とって、音だけで成り立っている放送メディアであるラジオは、色々とやりがいのある素晴らしい世界。
制作現場も手作り感があり親しみ深い。機材にしてもテレビ局にくらべラジオ局のスタジオはとてもシンプル。
だからHPLをすぐに試してもらえたし、そうした思い切った判断が楽しい番組を生むことになる。

HPLがニッポン放送さんの目に留まったタイミングは、FM補間放送、つまりワイドFMが始まるタイミングと重なっていました。
radikoだけでなく、電波放送もステレオとなれば、もうステレオ放送が主に成らざるを得ない。
一度はAMでもステレオ放送を始めてみたものの、すぐモノラル放送に戻って行ってしまったのに...

そうした中ラジオ局がワイドFMを推進して行くにあたり、「(今までよりは)音が良くなります」「ステレオ放送になります」ではあまりにインパクトがありません。
テレビのステレオ放送が当たり前になって何年経っているのか。音楽がステレオになって何年経っているのか。
だからHPLを提案し、「ステレオになります」では無く、一気に「サラウンドになります」にしましょうと。

ご存知の方は殆どいないと思いますが、2015年10月に始まった試験電波によるワイドFM放送内で、【HPL5】The Four Seasons( http://www.e-onkyo.com/music/album/unahq2005h/ )など数曲のHPL音源が放送されています。
自分の作ったHPL音源がラジオで流れる。即ラジオを買いに行き、放送日実際にHPL音源がラジオから流れた時は感動しました。
そして音質こそ落ちているものの、HPLとしての効果は落ちていない事を確認。
それがニッポン放送さんとのHPLを使ったラジオ放送のスタートです。


野球中継を3Dサラウンド放送するにあたり、まず問題なのは放送ブースが狭い事。
そのために最小限の機材でお邪魔する必要があります。
そして通常放送の技術や進行を大きく変えてしまうこと無くその中へスッと入り込む。
新しい試みを形にするにはハードルを下げないと。

よって球場の既設マイクを使い、手荷物程度の持ち込み機材で(実際電車で現場入りした)3Dサラウンド放送にしています。
もちろん3Dサラウンドを考慮したマイク設置、特別回線などの準備をすればとても素晴らしい音で放送出来ると思いますが、有る物を利用しちょっと工夫する程度でも、従来の放送と比較して飛躍的に楽しい音となります。
この事はリスナーの感想を集めると明らかになりますが、しかしやる前は「これでわかるだろうか?」と二の足を踏みがち。
何事も「やって見たら思った以上に楽しんでもらえた」となる事が殆どなのでどんどん挑戦すべきです。
作り手以上に聴き手は感動するもの。


記事中にもあるように、現在は僕が3Dサラウンドミキシングを行なっていますが、もちろんそれをしていては今後の進展はありません。

ニッポン放送さんの場合放送ブースの卓がDante対応なので、プロセッシングを行うPCに使用するオーディオインターフェースをDante仕様にすれば、卓とDante接続でセンドリターンが組め、システムは更にコンパクトになりますし、ミキサーさん自身が3DサラウンドMixを行なえる環境が整います。
後はミキサーさんに3DサラウンドMixの楽しさを知っていただき身に付けてもらえたら、すべての野球放送を3Dサラウンドで放送出来るはずです。




画像は、東京ドームの既設マイク位置と、3DサラウンドMixの関係を示しています。
もちろんマイクの設置位置や本数は球場ごとに違うのでMixも変わります。
サッカーもテストした事がありますが、全く異なります。
それを「大変」と思うか「楽しい」と思うかは熱意の問題ですね。


ラジオは音の文化です。
テレビはやはり映像がメイン。
ラジオの音はテレビより面白いものであって欲しい。


次回、3DサラウンドMixの所をもう少し話したいと思います。


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