2022/08/18

3DXで7.1.4chをバイノーラルモニタリングするには




2022年9月号のサウンド&レコーディング・マガジンに載っている、ミキシングエンジニアの奥田泰次さんとグレゴリ・ジェルメンさんによるNovoNotes 3DXのレポート「プロ・エンジニアが語る!立体的な音場を創出するプラグインNovoNotes 3DX」を読んで、両氏ともに3DXを使ってサラウンドをバイノーラルモニタリングしていることを知り、ちょっと予想外でした。
もしかして、そうした使い方を皆さんするのかな? と。

HPLを作った身としては、3DXの5.1chや7.1.4chなどからのバイノーラル化は、本来のHPLの音ではないので、そう思われたくないなという想いが半分、それでも使えるんだ?という想いが半分です。

各チャンネルフォーマットをきちんとバイノーラルモニタリングするには、専用機であるHPLバイノーラルプロセッサー「RA-6010-HPL」が必要です。
※現在はNovoNotesよりHPL Processorプラグインが発売され、HPL本来のバイノーラルサウンドでモニタリングが行えるようになりました。

3DX内で本来のHPLの音質を持つのは8ch Cube → HPLの場合だけです。
(詳しくは「HPLのグレード」を参照)


とは言え、
100万円するRA-6010-HPLはそう簡単に買えるものではないので、3DXでバイノーラルモニタリングしてMixできるなら、それも一つの方法かと。
少なくともスタジオに入る前のプリMixとしては、十分に使えるのでは?と思いました。

で、実際に3DXの7.1.4chのHPLバイノーラルと、専用機であるHPLバイノーラルプロセッサー RA-6010-HPLのHPLバイノーラルとを比較してみました。


まず、RA-6010-HPLによる7.1.4ch入力→HPLの音です。
声とピンクノイズをch順に再生していますので、ヘッドフォンで試聴してみてください。





続いて、3DXによる7.1.4ch入力→HPL出力の音です。

※3DXではサブウーファーchが全周波数帯域をパスしてしまうので、事前にハイパスしておく必要がありますが、今回はしていません。





まぁ確かに他のバイノーラルアプリに比べたら、いいかもしれませんね。



3DXのパラメータを調整して、少しでもRA-6010-HPLの音に近づけないか、トライしてみました。

色々試したのですが、
最終的に行きついた設定がこちら




Scaleを
width = 1.5
depth = 1.3
height = 1.2
にしました。





L/C/Rの音像がRA-6010-HPLに比べ3DXの方が上がってしまうので、本当はPositionのZを-0.4とかにしたいのですが、音が少し変わるので今回はやめました。
そこはお好みで。

これで定位のバランスは近い状態です。
左右の距離感がどう調整してもRA-6010-HPLのそれに近づけず、3DXの方が全体的にナローです。

RA-6010-HPLのフルHPLバイノーラルプロセッシングによる7.1.4chの音と、3DXの音との大きな違いは、まず明確な音像です。
RA-6010-HPLの音像が点音源でシャープであるのに対し、3DXは少し面で鳴っています。

そしてもう一つは音質。
今回のテストでは分かりづらいと思いますが、音楽をMixした時の音質が、RA-6010-HPLと3DXとでは差があります。

3DXは音質が良いと評判ですが、RA-6010-HPLのバイノーラルはさらに良いです。
完パケのマスターをバイノーラル化するための機材なので当たり前です。


今回は7.1.4chで試しましたが、5.1chなどの他のフォーマットでも3DXのパラメータを同じ設定にすれば同様の効果が得られると思います。

3DXでバイノーラルモニタリングをする際の参考にしてみてください。



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