2018/11/18

立体音場生成に必要なスピーカー配置のイメージ

イマーシブサウンドはスピーカーのチャンネル数や配置で生まれるものではありません。 ハイトチャンネルを加えた再生システムに対しミックスされた音楽を、すべてイマーシブと表するのは違和感があります。 その再生環境で全くイマーシブでないサウンドを作ることは容易に出来る訳で、イマーシブかどうかは作品によるところ。 映像や音楽作品では5.1chや7.1chの水平サラウンドが主流だったところに、ハイト4chを加えた形の増設再生システムなので、スムースな立体音場生成は難しく、イマーシブ(没入感)な音を鳴らすのはなかなか大変です。


まず再生フォーマットがあり、そこからの個別の音を上手く一つの音場として聴かせる




そうしたプロダクション制作とは別の流れで来た立体音響作品やVR音響では、まず立体音場生成を目的として再生システムを考えるので、もともと5.1chなどと言った再生フォーマットの縛りはなく、没入感ある音を鳴らすための最適なスピーカー配置を一から考える事が出来ます。
よって没入型VRのシステム設計において、自ら5.1chを提案したことはありません。


まず表現したい立体音場があり、それを生成するための台数や配置、手法を考える



アコースティックフィールドではよく、下層4chスクエア、上層4chスクエアのキューブ型スピーカー配置を行い作品展示をしていますが、それはフォーマットではありません。 その時に展示している作品が立体的な表現や臨場感、没入感を持つ作品なので、それに合せてスピーカー数と配置を考えた結果です。 立体音場生成のための最もミニマムな構成がキューブ型のスピーカー配置なのです。


下層4chスクエア + 上層4chスクエア スピーカー配置



立体音場を作るにあたり、耳の高さのスピーカー配置の優先順位は高くありません。 下と上に立体配置することが先となります。 その方がイマーシブに鳴らしやすいです。 なぜか、それが自然だからです。 人は日常的に全方位から音を浴びていますが、その状態を最も単純に構成出来るのが下層スクエア4ch+上層スクエア4chのキューブ配置になります。 耳の高さの前方に音があるから通常のL/Rスピーカーが必要、と言うのはチャンネルベースの考えが抜けていないから陥る落とし穴です。 2chの音楽制作においても、L/Rのスピーカーでパンを用いスピーカーの無い位置へ音像を定位させています。 Lスピーカーの位置からだけ音を出そうとミックスすることはまれな事ではないでしょうか? 音は空間に定位させたいのであって、スピーカーに定位させたいわけではないです。 その事を忘れると、とにかくスピーカーの台数を増やそうとする発想になってしまいます。 耳の高さの水平配置に上層を足すスピーカー配置は不自然です。 考えてみてください。 スピーカーが1台あったら、正面に置くのが自然かと思います。 2台なら左右に置きますね。 正面と左といった置き方はしません。 左右のスピーカー配置は縦方向に考えた場合上下となります。 そう考えれば耳の高さと上層だけと言うのはおかしいですよね。 また、耳の高さに上層とさらに下層を足し、天高が無いのに縦に3つのスピーカーを並べているのを見かけますが、立体音場を生成すると言う点から見ると無駄ですし扱いにくいシステムになってしまいます。 左右2chのスピーカーにセンターを足してLCRにすると扱い辛くなるのと同じです。 高さ方向も上中下の3点にしてさらに扱い辛くしてどうするのでしょうか。


5+4chのスピーカー配置のAmbisonics
左下の赤色のマップはエネルギー分布を表示
不均一なのが分かる
(IEM Plugin - AllRADecoder 使用



8chキューブのスピーカー配置のAmbisonics
均一なのが分かる


(分かりやすく説明するためAllRADecoderの設定方法は実際の使い方とは異なります)


均等に配置することが、Ambisonicsを扱う上でも有利な事を、鋭い方はすでにイメージされたかと思います。
アコースティックフィールドでは、長くAmbisonicsやチャンネルベースのミックスなどをこうしたスピーカー配置により混在させ、よりイマーシブな作品作りをサポートしています。


スピーカーの数が増えればそれだけスピーカーを個別に鳴らそうとする。 エンジニアもクリエーターも同じです。
そうなると「たくさんのスピーカーが鳴っている作品」が出来がちでイマーシブにはなりにくい。
逆にスピーカーが少なければ空間を鳴らす工夫をします。 その積み重ねによって作品にも没入感が出て来るのです。 システム側の考えとしては、アーティストが狙った表現を作り出しやすくするために、横方向と縦方向を区別せず同じ考え方をし、出来る限りスピーカー数は少なく、均等で自然な配置を心がけるのが、良い作品作りに繋がると思っています。


次回投稿の「プロダクションのスピーカー配置における立体音場生成」は続編になりますので是非。


1 件のコメント:

  1. ローランドのRSSを使いますと、またスピーカーの配置等が変わってくるのでしょうか?

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