2022/12/10

360 Reality Audio に8chキューブMixを配置する際の注意点

BP3600
スーパーカーディオイド4本で空間を録るというよりは8方向を録るマイク

先日の国際放送機器展InterBEEにて、オーディオテクニカさんが8chキューブのマイクロフォンを展示されていました。

これをAtmosの7.1.4等のフォーマットに対しどう扱うかは一旦置いておき、ブースのデモでは360 Reality Audioを使い、マイクと同じ8chキューブにWalkMix Creatorで各chを配置してバイノーラル化した音を試聴できました。



そこで疑問に思ったことがあったので確認。



以前ブログにも書いた通り、360 Reality Audioのバイノーラルは指定した音源の角度とバイノーラル化された音像とに開きがあります。

「空間オーディオ制作のためのバイノーラル比較」参照


90度(真横)に指定した音像が110度くらいに聴こえる、135度に指定した音像が155度くらいに聴こえる


ということは、8chキューブもフロントL/Rを45度、リアL/Rを135度で配置してしまうと音場は歪んでいるはずです。



結果としてはやはりそうで、

聴感で斜め後ろの135度が135度として聴こえるようにするには、おおよそ122度に指定する必要がありました。


テストの方法としては、実際に組んだ8chキューブに対してどの程度ズレているかを比較試聴。

WalkMix Creatorで122度にすると、実際の135度のスピーカーとおよそ同じ位置に音像が定位します。

ちなみにNovoNotes 3DXで135度に設定すると、3DXのバイノーラルの音像は実スピーカーの位置とほぼ一致します。



フロントL/Rを45度 リアL/Rを135度とした8chキューブ配置(紫)
聴感では見た目よりフロントはワイドにリアはナローに聴こえる


フロントL/Rを40度 リアL/Rを122度とした8chキューブ配置(緑)
聴感ではこれで正しい8chキューブの音場となる



この様に、立体音響の標準フォーマットと言える8chキューブを扱う際、BP3600の様なマイクアレイや、Ambisonicsを8chキューブに変換したり、8chキューブのMixをしたりといったプロジェクトを360 Reality Audioで扱う場合は注意が必要です。


もちろん、他のスピーカー配置のフォーマットに対しても同じことが言えますが、8chキューブはより没入感のあるフォーマットであるため、それを無駄にしたくはありません。



これはバイノーラル、つまりヘッドフォンで聴く場合の話になります。


そもそも360 Reality Audio のスタジオのスピーカー配置13chに、丁度よくこの8chマイクアレイを割り当てることは出来ないので、WalkMix Creator内でどの様な8chキューブに配置したとしても、スピーカーモニタリングでは正確に再現されません。

その上ヘッドフォン内でも正確には再現されないとなると困りますね。

どこにも整合性が無いというのが現状です。


と、ここで思ったのが

本当にヘッドフォン内の定位と13chスピーカーでの定位とが聴感で違うのか?

ということ。


スピーカーモニタリングとヘッドフォンモニタリングとの整合性を高めるために、あえてバイノーラルの定位を崩していて、それによって実は同じ様に聴こえる、ということは無いでしょうか?


そうであれば、辛うじて13chのスピーカーアレイでオブジェクトベースのMixをしていると言えなくもない...



無いでしょうね


どなたか試しているなら教えてください。



360 Reality Audioの空間オーディオ作品は、特別な機会を除き、一般リスナーが13chスピーカーで聴くことはありません。

市販のヘッドフォン、あるいは市販の特殊なスピーカーによる再生だけです。


であるなら、360 Reality Audioは始めからヘッドフォンモニタリングでMixすることが、リスナーに同じサウンドを届ける明確な手段となります。


13chのスピーカーを配備するスタジオでMixしても、ヘッドフォンでのように空間的なMixも出来なければ、そのサウンドはバイノーラル化したときに別のバランスとなってリスナーに届いてしまいます。


つまりスタジオは要らないと思います。



この8chキューブMixを360 Reality Audioに変換する際の問題を、もっと早く検証すべきでした。

分かっていたのに。


ただ、これは聴感上正しいかどうかの話であって、サウンドとして有りか無しかという話ではありません。

正しくないことで、生まれる良いサウンドもあるということです。





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