8chキューブでの立体音響作品鑑賞会[Cube: Immersive]を通じ
来場される立体音響に関心の深い皆様とお話している中で思うことがあります。
まずは8chキューブ配置というミッドレイヤーの無いスピーカー配置であっても、音で判断し素直にそれを受け入れていただけるという事。
そして自身でも作品を作ってみようと声にする方がとても多いこと。
これは数年前では無かったことなので、すごく前進したなと感じています。
実際にイマーシブオーディオ作品の制作を仕事として始めてみると、制作に関して色々なストレスを感じ、もっとやれるのでは?というジレンマもあるようで、そうした方々から8chキューブでまず立体音場でのMixをしてみたい、と声が上がるのは必然なのかと思います。
すでに自身のスタジオで8chキューブ配置を導入されているエンジニアさんも数名いらっしゃいますし。
そうしたこともあり、Cube: Immersiveの会場RITTOR BASEでスピーカー選定とセッティング方法の質問は何回もいただきました。
質問で多いのが2つ。
1つ目はスピーカーの距離
これは結構やり始めると、どの位の距離が適しているのか悩むものです。
色々試してみないと分からないので時間が掛かると思います。
Cube: Immersiveでのスピーカー同士の間隔は、正確に計っていません。
すばらしい作品の立体音場を聴くと、レーザーで距離と角度を正確にだして調整しているに違いないと思っている人もいるかと思いますが、実際は「こんな感じかな」で設置しています。
その「こんな感じ」にはもちろん、経験則からの基準があるのでそれに向かって調整しているわけですが、計測したりはしていません。
RITTOR BASEの床板の幅が1枚7cmくらいだったと思うので、左右に15枚分開いたところに設置していますから、1.05mの左右で2m10センチです。
会社に設置している8chキューブも大体同じくらいです。
その位の間隔だと広い音場でも狭い音場でも丁度よく表現することができます。
あとはその時々の生成する音場によって、1.5m~3.0mくらいの間で設置調整することが多いです。
インスタレーションでは、これを拡張して10m以上に拡げることもあります。
一辺2m10センチのキューブが入る球体のサイズを考えると、スピーカーまでの距離は約1.8mになります。(水平の距離だけだと1.5m弱)
これって2Mixのモニタースピーカーの設置距離と比較して大きな開きは無いかと思います。
2.1mのキューヴで直径約3.6mの球体音場が作れる |
スピーカーの特性にもよるとはいえ、ニアフィールドモニタースピーカーを8chキューブにも採用する人が多そうなので、そうなってくればニアフィールドの距離に設置するべきです。
2つ目はスピーカー選び
僕はCube: Immersiveを含め、多くの作品でCODA AudioのD5-Cubeを採用していますが、
その理由としては
・同軸2Wayで左右だけでなく上下の指向角が同じ
・大きな音がだせる&遠くまで音が届く
・指向角が90度
・音が良い
音以外の理由
・設置しやすい
・小さい
など
大きな音が出せる、遠くまで音が届くと言うことは、広い空間にも対応出来るのはもちろん、2メートル四方程度の空間に対してなら多少スピーカーの距離を変えても音が変わらないという利点があります。
ニアフィールドモニターだと、2メートル程度でも距離を変えると音の変化が大きいです。
また、自然な立体音場を作るのに重要なのが指向角です。
PA用のスピーカーはウェブの製品仕様に指向角が記載されていますが、モニタースピーカーにはそれが無いので、聴いて確認する必要があります。
指向角の狭いスピーカーは使いにくいです。(スイートスポットが狭くなる)
そして指向角は上下の繋がりに大きく関わります。
また、以前から8chキューブは球体の音場、
7.1.4などは半球体の音場、
と一般に言われている事に同調してきましたが、本当はそうとも言えません。
Atmos対応スタジオでも同軸スピーカーを使用しているところと、縦長の2wayなどのスピーカーを採用している所があると思いますが、一様にエンジニアの皆さんは、上下にパンしたときの音の繋がりの悪さを口にされます。
これはAtmosの場合、フロントL/Rが30度/30度なのにハイトL/Rは45度/45度なので、そもそも縦に繋がりづらい配置だという問題と、
さらにスピーカーが左右と上下の指向角が異なっているために繋がらないという二重の問題が起きています。
この状態だと実は半球体ではなく、水平面が2層ある音場のイメージといえないでしょうか?
7.1.4ch - 半球体の音場と言われるが |
実際は中層と上層からなる2層の音場? |
それでイマーシブな音場を作るのは難しいですよね。
見直すべきだと思っています。
そしてこれは8chキューブでも起こりえます。
8chキューブは配置的に上下が繋がりやすいですが、スピーカー自身の上下の繋がりに難があれば、やはり下層と上層で2層の水平音場が出来ると言えなくもないです。
8ch Cube - 球体の音場を作れる |
スピーカーによっては下層と上層からなる2層の音場に? |
そうしたことを考慮して、上下左右が均一に繋がるスピーカーを探しましょう。
何をおいても作品を音にするのはスピーカーです。
せっかく立体音場を手に入れるために8chキューブまでたどり着いたのなら、スピーカー選びは妥協したくないですね。
・1辺2m程度のキューブに8chを配置する
・すべて同じスピーカーを使う
・フルレンジあるいは同軸2wayなど上下左右の指向角が同じスピーカーを使う
・安物の機材やケーブルを使わない(高い機材を使う必要は無い)
・設置空間の音場を整える
これらを守れば、アーティストやエンジニアがあのような立体音響作品を生んでくれるはずです。
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