2020/01/02

2つの受賞作にみる共通点

2019年は2つの作品が受賞。
この2つの作品には共通点があります。


「Stradivarius: Timeless Journey」




2018年の「ストラディヴァリウス 300年目のキセキ展」でのQosmoさん企画制作によるインスタレーション作品。
アジア地域最大級の広告コミュニケーションに関するフェスティバルSpikes AsiaのDigital Craft 部門にてグランプリを獲得。

300歳のヴァイオリン、ストラディヴァリウス「サン・ロレンツォ」を無響室で録音。
徹底して資料を集め、ストラディヴァリの工房、ヴェルサイユ宮殿のプチトリアノン内サロン、旧ゲヴァントハウス、そしてサントリーホールをモデリングし音響シミュレーションを行う。
その音と映像をヘッドフォンで視聴するもの。






 音響シミュレーションとバイノーラルシステムを担当。 これほど魅力的な企画もそうは無いだろうということで、二つ返事で参加を承諾。 とーっても大変でしたが、やり甲斐とロマンある作品でした。 音はほんのちょっとだけ、下記リンク先の作品説明ビデオで聴くことができます。 ヘッドフォンやイヤホンでどうぞ。
https://www2.spikes.asia/winners/2019/digitalcraft/




「Lenna」



アルバム「Orb」Miyu Hosoi に収録された22.2chの「Lenna」を5chにレンダリングしたバージョンが、第26回日本プロ音楽録音賞のハイレゾリューション部門(クラシック、ジャズ、フュージョン)優秀賞、ニュー・プロミネントマスター賞をダブル受賞。


22.2chのスピーカーシステムに代わり、HPLのバイノーラルプロセッシングでの22.2chヘッドフォンモニタリングシステムを用意し、3Dサラウンドミキシングをサポートしました。

22.2chの音楽作品であり、まったく新しい制作方法とコンセプト。
ニュー・プロミネントマスター賞は誰が見ても納得の内容だと思いますが、ハイレゾ部門の優秀賞は本当にセンセーショナル。
作品の中心となったアーティスト、作曲家、エンジニアの3人が20代のこの作品の受賞、その実際に高いクオリティは音楽制作関係者にとってショッキングだったと思います。


これが起爆剤となって音楽制作が進化することを切に願います。



この2つの作品にはしっかりとした技術が軸にあります。


インパルス応答を用いた残響付加やバイノーラルと言った技術は昔からある。

重要なのはそれをどう高いクオリティで使うか、面白く作品に繋げるか、そして最後にはエンタテインメントとしてどう仕上げるのか、と言うプロセスが自分は好きなのだと思います。

音楽作品である「Lenna」はもちろん、インスタレーションの「Stradivarius: Timeless Journey」もエンタテインメントの作品を目指して制作されました。

現存しない部屋を資料からモデリングしその音を復元するだけなら、恐らくそれは歴史的な技術資料として「こんな音だったのか」と言う確認作業をするだけの体験となります。

そこからもう一歩踏み込んで、音楽の気持ちよさや作品の面白さを使われている技術抜きに体感できるところまで持って行くことで、エンタテインメントになると思います。

それには音源としての音質、音響としての音質をある程度確保する技術が大切です。
それが立体音響ならなおさら。



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